「読書」カテゴリーアーカイブ

世界からコーヒーがなくなるまえに20210318

コーヒーの生産、流通、消費の歴史と、今どういう状態で、これからどうなっていくのかについて、ある生産家の取材を中心にまとめられたドキュメンタリーの書籍です。ごく簡単にまとめると、安売りのコーヒーを消費者が無駄に消費していると、環境破壊がどんどん進み、コーヒーの生産が50年後にはできなくなるのではないか。質の良い、サステナブルな、オーガニックのコーヒーに少し多めのお金を払って大切に飲むようにすればその問題は解決できるかもしれない。資本主義経済を良いほうに変えることができるのは消費者なのだ。
ただ、高品質とオーガニックとサステナブルは、なかなか両立するのが難しいと。
コーヒーはなくなってほしくないので、スペシャルティコーヒー(生産者が追跡できて品質が良いとされているもの)を選んで大事に飲もうと思います。

大統領失踪20190807

元アメリカ大統領ビルクリントンが人気作家とコラボして書いたエンターテイメント作品。主人公はアメリカ大統領で、おそらくクリントン氏の理想の大統領像か。いくつもの謎とスリル、困難に立ち向かう大統領、登場人物それぞれの思惑は???最後まで面白く読めました。思いもしなかったどんでん返しも仕込まれています。そして翻訳者は、私の大好きな越前敏弥さんほか1名。越前さんのおかげで、ダンブラウンの「ダヴィンチコード」をはじめとした小説を楽しめましたので、今回も期待して読みました。インターネットに頼りすぎた社会はサイバーテロにはもろいというのがテーマですが、それは去年の北海道ブラックアウトでちょっとだけ経験済みですよね。数か月インターネットがつながらなくなる世界を想像してみてください。かなり怖いです。

アニメ ピアノの森20180422

以前マンガのピアノの森について書きました。

ピアノ曲がたくさん出てきますが、あまり知らないですし、演奏についての描写が多く、全く想像するしかなく、聞いてみたいものだと思っていました。それがアニメでかなえられるのです。実は以前アニメ映画もできていたようで、そのときのピアノ担当は大御所のアシュケナージだったらしいです。今回TVアニメ24回シリーズということでピアノは各キャラクターに対してそれぞれふさわしい若手ピアニストが選ばれていて、登場人物になり切って演奏してくれるようです。つまりピアノ表現に力を入れた番組つくりになっているということですね。気づいた時にはもう2回分放送が終わっていて、今晩3回目が放送されるので、今回から録画して見逃さないようにしたいと思います。

忘れられた巨人、夜想曲集、浮世の画家、私を離さないで20180331

ノーベル賞作家の作品を読んでみました。翻訳されているので、文体がどれほど作家のものを表現しているのでしょうか。読みやすい文ではあります。あまり劇的ではないのですが、じわじわ引き込まれる感じ。なんだか回りくどいような表現ですこーしずつ気づかれないように変化していき、とうとう連れてこられたみたいな感覚になります。文学の批評はできませんので、つたない感想まで。

ホモピクトルムジカーリス アートの進化史20170915

ヒトはなぜ芸術活動をするのか、動物学的観点から考察した本です。作者は岩田誠。2001年に書かれた「脳と音楽」という本は音楽家の脳について研究した内容でありとても興味深く、図書館で借りた後に購入してしまいました。読み始めて間もなく、同じ作者の本と知り、期待して読み進めました。

絵を描く行動は言語の習得と関連していることが幼児の発達の観察から示唆されました。仲間に行動を促すタイプの言語は類人猿をはじめとするいろいろな動物で見られるが、目の前に見られない物事を伝えることができるのはヒトだけであり、そのことがアートを生み出すとしています。古代の洞窟画のある場所は非常に音響の良い場所であることが明らかになりました。当時その絵の前で、楽器を鳴らしたり歌を歌ったりしていたことが想像されます。

アートは祈りであり、帰属する集団の一体感を高めるものであるということは古代も現代も変わっていないことのようです。

動的平衡(1)(2)、変わらないために変わり続ける、生命と食 福岡伸一20170730

分子生物学者の福岡伸一さんの著書をまとめ読みです。『生命と食』(2008)は食べたものが生物の体を構成しておりそこに動的平衡が存在する。それを無視した効率だけを考えた食料供給が人間に与える影響は大きいのではないかという話。狂牛病は人災だとか、遺伝子組み換えは時間の淘汰を受けていないということに科学的に意見を述べています.

『変わらないために変わり続ける』(2015)はニューヨークで客員教授をしていた時のエッセイ集。科学に関するものは共感できることばかり。文学、食文化、自然観察、そして芸術に関する所感が並びます。どれも科学者の、平等で公平なものの見方に基づいていて、素直に読めます。

動的平衡1(2009)は、生命の定義について論じていて,生体は機械の部品からできているのではなく、分子の流れのよどみである,環境と別のものではなく、生命を考えるときは周りの環境も考えなければならない。脳は錯覚するようにできていて、直観に頼ると真実をとらえられない。そのために勉強するのだと述べています。

動的平衡2(2011)は主に遺伝子について考察されています。今まで遺伝子についておぼろげに抱いていた疑問について多くのヒントを与えてくれます。ヒトとチンパンジーの遺伝子は98%以上が同じで違っている部分に人間を特徴づける遺伝子があるわけではないという。種の違いを生じさせるのは、遺伝子が発現するタイミングではないかと著者は考えている。それを引き起こすのは,卵細胞内の物質であったりDNAの糸巻の状態だったりまだまだ研究途中だそうです。遺伝子の正体がDNAでこれがタンパク質の構造を決めているのだという大発見以来、生物学者はDNA信仰とでもいうものにとらわれてきた傾向があります。しかしDNAだけで説明できない多くの矛盾や疑問を説明するには、エピジェネティクスという考えが出てきているということで、これから生命の謎が解き明かされていくのを楽しみにしようと思います。

サザビーズで朝食を20170629

競売人が明かす美とお金の物語という副題のついたフィリップフック著の本を読みました。著者はクリスティーズ、サザビーズといったオークション会社で絵画部門のスペシャリストとして長年働いていて、美術品の値段が決まる仕組みに精通しています。需要と供給の関係が成り立ち、芸術的にどうかということより、だれがいつ描いたかのほうが値段に影響します。それは買い手が安心してお金を出せるということ、すなわち、価値が下がりにくいということ。ほしがる人が多いかどうか、それはたとえばその絵を飾りたいと思う人が多いかどうか。応接間にそれとすぐ分かる美術品が飾ってあれば来客にアピールできる。ステイタスを示せる作品は当然値が上がるのです

それとすぐ分かる作品は、複製しか買えないだろうけれど、飾りたいと思う作品が見つかったら買ってみたいな。飾る場所が問題かな。

 

体の使い方 アレクサンダーテクニーク 20170622

太極拳とフルートをやるときに、共通な体の使い方があるのに気づきました。それは、水泳やランニングにも共通しているように感じていました。アレクサンダーテクニークは人間の体の使い方の基本原則を見つけ出したオーストラリアの俳優、アレクサンダーさんが研究の末まとめあげた方法です。

頭、首、背中のバランスがすべての動きをスムーズに効率よく行うためには重要で、常に動きを意識しフィードバックすることでパフォーマンスを上達させられるということです。このことに関して3冊の本を読みました。「アレクサンダー・テクニーク やりたいことを実現できる<自分>になる10のレッスン 」小野ひとみ著  「音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと アレクサンダー・テクニークとボディ・マッピング 」バーバラコナブル著  「ランニングを極める アレクサンダー・テクニークで走りの感性をみがく」    マルコムポーク、アンドリューシールズ著   基本情報と、音楽家のための応用、ランナーのための応用です。

最近けがをして、自分の動きを見直す必要が出たのでこの本は大変参考になりました。ただ、習得するには難しそうなのでできることから普段の生活やトレーニングに取り入れようと思いました。無意識に動いてしまうことが多いのですが、動く前に意識するだけで動きが少しずつ洗練されてくるのです。

毎日の積み重ねは積もり積もって良い結果につながっていくのではないでしょうか。

ピアニストの脳を科学する20170428

ピアニストは芸術家であると同時に、すぐれた身体能力を持つアスリートであり、膨大な音符を記憶し瞬時に情報処理をする知性の持ち主であるとまえがきに書かれていますが、私も常々そう感じており、どうやってそんなことができるようになるのか知りたいと思っていました。

練習によって脳が変化するというのは予想がついたことですが、指を動かす筋肉で省エネが行われるのがプロの演奏家だということで、なるほどと思いました。疲れず素早く動かすには、無駄な動きや力があるとうまくいかないのです。

興味深いのは楽譜の初見演奏のメカニズムです。視覚情報を素早く指の運動に変化させなければなりません。このとき周辺視野を使って1度に1小節程度認識して記憶し、音のイメージを得ているのだそうです。また、音符を動きに変換する脳の部位があるということも驚きでした。

音楽家にとって一番大切な聴覚に対応する脳細胞は、一般人の2倍も多く、つまり音の情報を処理する能力が高いということで、音の違いを聞き分け表現することができることになります。耳からの情報を脳の視覚野の細胞をも使って処理しているという事実には驚きです。そして、音と指の動きが直結するような脳細胞も発達しているとのこと。つまり目から、耳から取り込んだ情報を無駄なく指の動きに変換できる脳を持つのがピアニストのようです。その脳は、幼いうちから訓練することによって発達するものもありますが、大人になってからでも発達するものもあり、脳の訓練には大変良さそうです。