「アート」カテゴリーアーカイブ

ホモピクトルムジカーリス アートの進化史20170915

ヒトはなぜ芸術活動をするのか、動物学的観点から考察した本です。作者は岩田誠。2001年に書かれた「脳と音楽」という本は音楽家の脳について研究した内容でありとても興味深く、図書館で借りた後に購入してしまいました。読み始めて間もなく、同じ作者の本と知り、期待して読み進めました。

絵を描く行動は言語の習得と関連していることが幼児の発達の観察から示唆されました。仲間に行動を促すタイプの言語は類人猿をはじめとするいろいろな動物で見られるが、目の前に見られない物事を伝えることができるのはヒトだけであり、そのことがアートを生み出すとしています。古代の洞窟画のある場所は非常に音響の良い場所であることが明らかになりました。当時その絵の前で、楽器を鳴らしたり歌を歌ったりしていたことが想像されます。

アートは祈りであり、帰属する集団の一体感を高めるものであるということは古代も現代も変わっていないことのようです。

サザビーズで朝食を20170629

競売人が明かす美とお金の物語という副題のついたフィリップフック著の本を読みました。著者はクリスティーズ、サザビーズといったオークション会社で絵画部門のスペシャリストとして長年働いていて、美術品の値段が決まる仕組みに精通しています。需要と供給の関係が成り立ち、芸術的にどうかということより、だれがいつ描いたかのほうが値段に影響します。それは買い手が安心してお金を出せるということ、すなわち、価値が下がりにくいということ。ほしがる人が多いかどうか、それはたとえばその絵を飾りたいと思う人が多いかどうか。応接間にそれとすぐ分かる美術品が飾ってあれば来客にアピールできる。ステイタスを示せる作品は当然値が上がるのです

それとすぐ分かる作品は、複製しか買えないだろうけれど、飾りたいと思う作品が見つかったら買ってみたいな。飾る場所が問題かな。

 

北海道薬用植物図集20160420

北海道主要樹木図譜を作った工藤祐舜と須崎忠助コンビによる図鑑です。樹木図譜とは違い、白黒の線画ですが、ち密で美しいものです。薬が手に入りにくかった開拓時代に実用になるよう作られたものとのこと。

カラーの絵や写真はきれいですが、白黒の線画は形をはっきり示すので、たとえば野山で植物を見て鑑別するのにわかりやすいのではないでしょうか。説明文もありますのでかなり見分けられると思います。ただ、文語体で書かれていますので、現代の利用にはやや難あり。頑張って読んでみると、この草はこんな薬効があるんだ!という発見もあり面白いです。五味子や半夏,ゲンノショウコといったおなじみの生薬あり、まんさくがジギタリスの代わりになるとか、エンレイソウが胃腸薬とか初めて知りました。山に行く機会もあるので知っていると役に立つかも。

北海道主要樹木図譜20160412

大正9年から昭和6年にかけて刊行された植物図鑑です。札幌農学校2期生で後に教授になった宮部金吾と,ともに研究をしていた工藤祐舜により作られたが、なんといっても美しい画を描いた須崎忠助の力が大きい。植物画を見るのが好きで、いつか描いてみたいと思っていますので、この本の原画展が開かれるという情報に触れ、すぐ借りることにしました。といっても借りられるのは、もちろん出版当時のものではなく、小型にして口語表現に改められた復刻版です。学問的に正確で、実用的に配置、編集されておりなお美しく観賞してよしという、日本はもとより世界でも最高レベルの図鑑ということです。精密に描かれた図は隅々まで見ても見飽きることがありません。札幌にこんな素晴らしい植物図鑑があったなんて感動します。図書館で借りられますので、興味のある方は是非ご覧になってください。

アートフェア札幌20151123

中学生の爪楊枝アートが話題になりました。札幌のある中学のクラスで文化祭の作品として作られたとか。10万本の着色された爪楊枝を発泡スチロール板にさして描いたベートーベンです。

その作品が見られるということで、今年は若い人の来場が目についたアートフェア札幌。作品の販売目的で道内外のギャラリーが出店していますが、入場料1000円を払えばだれでも見られます。買わなくてもよい。何か購入すると1000円は返してくれます。数千円で買える手軽な作品や書籍もあるのでせっかくだから買いたくなります。

普通、販売目的のギャラリーはお店ですから無料で入れますけれど、買う気がなければ入りずらい。作品を発表する場である作家の個展などは無料で入れますが、一度に少数の作家しか見られませんし、気に入ったものがあってもなかなか購入まで思いきれません。その点アートフェアはいろんな作家の作品が一度に見られる、もし買いたいものがあったらすぐ買える。アート購入の垣根を低くしていると思います。ホテルの部屋を利用して展示しているので、ギャラリーごとに展示の工夫もあって面白い。

去年に続いて今年も見に行きました。ガラス作家のピアスを買いましたよ。値段も手ごろでデザインもありそうでない形。2日間だけの開催なので、また来年、この時期がホテルも暇なのでまたやるみたいです。

J.S.バッハその②20150614

バッハについての本を2冊読みました。岩波新書の『J.S.バッハ』と芸術現代社の『J.S.バッハの音楽宇宙』です。バッハはドイツの田舎の音楽を職業とする一族の生まれで、一生をドイツの地方のいわば音楽職人として過ごしたそうです。教会の音楽家だったときは、ミサのための音楽を毎週作曲し、宮廷音楽家だったときは、イベントや楽しみのために作曲し、また、弟子や音楽を勉強している人のために楽譜をたくさん作り、といった具合です。

たくさんの曲を作ったのですが、機械的とか単調というのでもなく、人間性の表れる聞く人の心を動かす作品が作られました。その結果、時代を超え、ジャンルを超えてバッハの曲が演奏され聞かれています。宗教曲を作ったのですが、自分の宗派と違う宗派に勤務していたこともあり、純粋な信仰心から生まれた曲というより、職務に忠実にまじめに、人間として普遍性のある音楽が作られたようです。

また、それまでに積み上げられてきた音楽の技術を集大成しようと考えていたようで、それこそが、音楽の父と呼ばれる所以でしょうか。音楽一族に生まれたものの発想にも思えます。バッハはバロック後期の作曲家とされています。現代から見ると、バロックは単調、つまらないなどという印象を持ちますが、当時はつまらないルネサンス時代から変化を求めた時代だったそうで、いろいろな人が新しいことをやった上でのバッハということです。

その後多くの音楽家に影響を与え続けています。芸術とは、場所、時代に関係なく人間に影響を与えるもののことを言うのだと思います。