「読書」カテゴリーアーカイブ

脳を鍛えるには運動しかない20151215

ジョンJレイティの著書です。(2008年1月アメリカ、2009年3月日本)もう8年近く前の本です。

運動すると脳細胞の発達を促進する物質がいろいろできるとのこと。
授業の前に30分のランニングをすると、成績がアップした高校の話や、うつやパニック障害などに運動が薬と同等の効果をもたらすとか。更年期障害や老化にまで運動が体と脳の両面から好ましい効果をもたらすということ。私たちが経験的に感じていることを、細胞レベル、分子レベルで証拠を上げてくれています。

つまり、体を動かすことと、思考することはどちらも脳の働きで、区別して考えるべきではないということでしょうか。分子レベルで見ると、脳の中では同じことが起こっているということです。そして脳により強い刺激を与え、成長を促すのは運動だということ。少しのストレスが成長には必要で、ストレスによって増える物質が脳細胞の成長を促す物質を増やすよう働きます。

体各部の運動神経、感覚神経に対応する部分が脳にありますが、大きなスペースを占めているのが手指と口,舌です。ペンフィールドのホムンクルスが有名です。では、手指と口を同時に動かせば脳は鍛えられるのではというのがわたしの考えです。管楽器はどうでしょう。特に木管楽器は両手の10本の指と唇、舌を同時に使います。おまけに視覚と聴覚、呼吸筋も使いますから、脳を鍛えるのにこれ以上ないと思っていますがいかが?

猫の古典文学誌20150722

私は完全なる猫派です。猫が日本人とどうかかわってきたかを古典文学から読み取った著者による作。平安時代は大陸から輸入した猫を飼うのがステイタスだったとか、船旅で書物を運ぶのにネズミにかじられないよう見張るのが猫の役目とか、猫の目で時刻を知るために朝鮮出兵に従軍した猫がいたとか。

猫はお釈迦様の最期の時に薬を届ける邪魔をしたから仏教の敵で涅槃図には猫は描いてもらえなかったとか、逆にうちのお寺の涅槃図には猫が描かれていて珍しいから見に来てと客寄せに使われたり。どちらにしても、猫が嫌われていたという感じはないようですね。

猫を多く描いた浮世絵師、歌川国芳についても触れられていました。4月に展覧会が開かれていましたから記憶に新しい。いろんなポーズの猫を描き、ダジャレにしたり、組み合わせて別の絵を作ったりと、かなりいろいろやっています。やっぱり猫は昔も今も愛されるべき存在なのかな。

味と香りの話20150711

味と香り、味覚と嗅覚について、分子生理学の立場から解説した本を読みました。著者は、栗原堅三先生、薬学部在籍時代に薬剤学の教授でした。薬学部時代の研究エピソードなども書かれていてそちらも楽しめましたが、味と香りという身近なテーマでも生物にはいろいろな仕組みが備わっていて、でもまだよく分かっていない面もあるとのこと。20年近く前に書かれたものなので、その後明らかになったこともあるかもしれませんが。

甘みとうまみには、受容体があり、そこに結合できる分子だけが甘みとうまみを持ちます。割と限られた数の物質しかありません。塩味と酸味は、Na+,Cl とHを感知すればよいので、特別な受容体ではなく、イオンチャンネルのようなものから成り立っているでしょう。苦みを与える物質は数限りなくあります。それは疎水性の分子で、受容体を介さなくても直接細胞膜と結合できる分子だそうです。細胞膜に影響を与えられる分子、すなわち生体に影響を与える分子ということは薬がそうですね。毒もそう。良薬口に苦しと言いますし、ある研究者は薬の原料になりそうなものを世界中で探すとき,噛んでみて苦いもの、というのを一つの基準にしているとか。

においを持つ分子も、苦み分子と共通で、疎水性で直接細胞膜と結合できるものだそうです。におい分子の受容体もありますが、特異的なものではなくいくつものにおい分子と結合できる、しかしその細胞膜を構成する成分の違いによって、におい分子に対する感受性が変わってくる。そういう方法で、数限りない種類のにおい分子を区別することができるそうです。

と文字で書いてもさっぱり??だと思いますので興味のある方は本をよんでみてください。ちなみに辛味と渋味は味覚ではなく痛覚だそうですよ。

自転車で坂道20150702

先日藻岩山にトレーニングに向かうため、坂道を自転車で上っておりました。いつもは追い越すことはあっても追い越されることはありませんでしたが、その日はちょうど通学時間帯。ママチャリの男子高校生に相次ぎ追い越されてしまいました。これはまさに読み終わったばかりの『弱虫ペダル』の世界ではないか。

毎日のことですし、遅刻しちゃいけないから、坂の上にある高校生は自転車が強くなるのは当然と言えば当然。弱虫ペダルの主人公、坂道くんは中学時代に電車賃節約のためママチャリで何十キロも移動し、高ケイデンスを自然に身に着けます。自転車仲間を見つけて、競技の世界に入っていき、先輩の指導を素直な性格で受け入れ、どんどん成長していく物語です。その舞台の高校はお約束通り坂の上。自転車好きは燃えますね、上り坂。

少年漫画だから、文字が少なく、あっという間に読めちゃいます。でもやっぱり読書のカテゴリーですよ。レンタルで38巻+番外編1巻。TVアニメにもなっていますし、劇場版も公開されるとか。某ファッションビルがコラボ企画だそうで、入り口前に大きなカラーパネルが飾られていました。

昔から、漫画の登場人物は孤独でニヒルな敵キャラ的な人が好きですが、弱虫ペダルで気になるキャラはなぞ多きライバル、御堂筋君。ルックスも性格も変ですが、早く登場しないか楽しみにしています。1年生の時の3日間のインターハイに19巻かかっています。今2年生のインターハイが連載中のようです。気長に戦局を見守ることにしましょう。

J.S.バッハその②20150614

バッハについての本を2冊読みました。岩波新書の『J.S.バッハ』と芸術現代社の『J.S.バッハの音楽宇宙』です。バッハはドイツの田舎の音楽を職業とする一族の生まれで、一生をドイツの地方のいわば音楽職人として過ごしたそうです。教会の音楽家だったときは、ミサのための音楽を毎週作曲し、宮廷音楽家だったときは、イベントや楽しみのために作曲し、また、弟子や音楽を勉強している人のために楽譜をたくさん作り、といった具合です。

たくさんの曲を作ったのですが、機械的とか単調というのでもなく、人間性の表れる聞く人の心を動かす作品が作られました。その結果、時代を超え、ジャンルを超えてバッハの曲が演奏され聞かれています。宗教曲を作ったのですが、自分の宗派と違う宗派に勤務していたこともあり、純粋な信仰心から生まれた曲というより、職務に忠実にまじめに、人間として普遍性のある音楽が作られたようです。

また、それまでに積み上げられてきた音楽の技術を集大成しようと考えていたようで、それこそが、音楽の父と呼ばれる所以でしょうか。音楽一族に生まれたものの発想にも思えます。バッハはバロック後期の作曲家とされています。現代から見ると、バロックは単調、つまらないなどという印象を持ちますが、当時はつまらないルネサンス時代から変化を求めた時代だったそうで、いろいろな人が新しいことをやった上でのバッハということです。

その後多くの音楽家に影響を与え続けています。芸術とは、場所、時代に関係なく人間に影響を与えるもののことを言うのだと思います。