失われていく、我々の内なる細菌20161209

ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃がんの原因になる細菌として有名になり、保菌者は除菌するという医療が一般的になってきつつありますが、著者のマーティンJブレイザーは、細菌学、感染症学に長く携わり、ピロリ菌研究第一人者です。

生物の進化はその体内に膨大な細菌を取り込むことで進んできたのではないか、我々とともにある細菌は、時として病気を引き起こすが、ある時は健康に寄与しているのではないか。それでなければ、共存しているはずがないのではないか。たとえばピロリ菌保有者の方が胃がんになりやすいが、非保有者の方が逆流性食道炎になりやすい、という事実がわかってきています。

腸内の細菌は宿主のために消化吸収を担っています。免疫に関する役割も果たしています。人間だけでは到底保持できない遺伝子を補っています。皮膚の常在菌が存在しなかったら、病気を引き起こす細菌に感染しやすくなるでしょう。

抗生物質は致死的な感染症から劇的に身を守ってくれます。しかし予防的な投与はどうなのか、著者はそのことについて漫然とした投与をすべきではないと言っています。それによって、長い歴史の中で人間と細菌が作り上げてきた共存関係が崩れつつあると言います。

生物多様性が人間の発明した薬によって失われつつあるということでしょうか。

 

 

 

 

 

 

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