分子生物学者の福岡伸一さんの著書をまとめ読みです。『生命と食』(2008)は食べたものが生物の体を構成しておりそこに動的平衡が存在する。それを無視した効率だけを考えた食料供給が人間に与える影響は大きいのではないかという話。狂牛病は人災だとか、遺伝子組み換えは時間の淘汰を受けていないということに科学的に意見を述べています.

『変わらないために変わり続ける』(2015)はニューヨークで客員教授をしていた時のエッセイ集。科学に関するものは共感できることばかり。文学、食文化、自然観察、そして芸術に関する所感が並びます。どれも科学者の、平等で公平なものの見方に基づいていて、素直に読めます。

動的平衡1(2009)は、生命の定義について論じていて,生体は機械の部品からできているのではなく、分子の流れのよどみである,環境と別のものではなく、生命を考えるときは周りの環境も考えなければならない。脳は錯覚するようにできていて、直観に頼ると真実をとらえられない。そのために勉強するのだと述べています。

動的平衡2(2011)は主に遺伝子について考察されています。今まで遺伝子についておぼろげに抱いていた疑問について多くのヒントを与えてくれます。ヒトとチンパンジーの遺伝子は98%以上が同じで違っている部分に人間を特徴づける遺伝子があるわけではないという。種の違いを生じさせるのは、遺伝子が発現するタイミングではないかと著者は考えている。それを引き起こすのは,卵細胞内の物質であったりDNAの糸巻の状態だったりまだまだ研究途中だそうです。遺伝子の正体がDNAでこれがタンパク質の構造を決めているのだという大発見以来、生物学者はDNA信仰とでもいうものにとらわれてきた傾向があります。しかしDNAだけで説明できない多くの矛盾や疑問を説明するには、エピジェネティクスという考えが出てきているということで、これから生命の謎が解き明かされていくのを楽しみにしようと思います。